※はじめに断っておきます。今日は生徒の学力レベルを表現するのに「下位」「上位」という言葉を多用しますが、あくまでも学力的にということです。点数を取る力、勉強する力があるかどうかの意味だけであって、生徒の人間性などに関する記述ではありません。
それではいきます、昔勤めていた塾での話です。
その塾には「カルテ」と呼ばれる生徒個人の情報が保存されたファイルがあるんです。
そこには、日報と呼ばれる授業の内容を記録したものや、成績など、契約書以外の日々の学習の記録がファイルしてあります。おそらく個別であれば多くの塾が用意していると思います。
各担当の先生が授業時に記録するんです。先生が変わる時などは、そのファイルを見れば、その子の学習状況などが見れるといったもの。
入社して間もない時期であれば、生徒全員のカルテをくまなく見て覚えるわけです。
そんなことをしながら自分も授業を重ねれば、生徒全員の大体の学力が把握できます。
そしたら気づくわけです。
全ッッ然成績上がってねぇ…って。
いや、まずいでしょと。
なんでこうも上がってないままなのかと。
そこでまず一つのことを習慣化しました。1日で予定されている授業全てに入らず、授業している先生のサポートも兼ねて、巡回をする。1日3時間授業があれば1時間だけ授業して、残りは巡回。
そうすると問題点がいくつも浮き彫りになるのですが、1つだけ。
例えば次のテストで、「A」「B」「C」という内容がテスト範囲に入るとします。うちと同様2週間前からテスト対策を実施するとして、先生方が授業を進めていくわけです。
普段の授業で生徒に対して、A→B→Cと進めていくだけ。これ1つ言えることがあります。
それは、「学力下位〜中位の子達は絶対救えない」
ということ。
やはり忘れていくんです。この層の生徒たちは自分で勉強しませんから。
巡回時にCを勉強している生徒にAの質問をすると「わすれた」と返ってくるんです。
先生たちは順調に進めて行ってるつもりでも、生徒たちの頭の中には残ってないのです。
こんな感じでしょうか。
これでは、テスト対策期間にまた最初から教え直しです。
THE・無駄。
テスト前までの先生が授業を進めている間に、終わった内容の復習を同時進行で進めないといけない。
テスト前には覚えきっている状態を作り上げないといけない。
上位生はいいんですよ、何をやらしてても。
でもそうでない生徒は、これを実行できないと成績向上なんて不可能であると、若き日の私は気づいたのです。
実行するといっても宿題を出してやってきてもらうというのは、実はあまり効果が期待できません。宿題だって中身がしっかりしたものを提出していただかなくては意味がありません。
しかし、勉強できない生徒に家で自学してこいなんて命令が通用するわけがない。家で机に向かった頃には忘れているでしょうし、大好きなスマホで調べるなんて工夫もできません。誰かの監視下でないとまともにやりませんよ。
それができないから点数取れないわけです。
その低い学力を向上させるために大量に宿題を出すことはできない。週1回の授業の中でその宿題の丸つけと、おそらくたくさん間違いがあるでしょうから直しもしてあげないといけない。それだけで80分や90分が終わります。
それでもたくさんの勉強量が必要なわけです。もう塾に追加で呼び出して補習するしかありません。
ここで大きな壁が立ち塞がります。個別指導塾の授業システムです。
個別は1回授業を受けると料金がいくらという風に、回数で値段が決定しますよね。
はっきり言うと、週1回の授業料で週に2回も3回も追加で「授業」をしてあげるのはあまり褒められる行為ではないのです。2回、3回分の授業料を払って通っている生徒もいるから。
会議でたびたび話題に上がるのですが、「自習には呼んでもいい」という程度に留められるわけです。
その言葉に従って自習の約束を取り付けて、やらせてみたことがあります。たまにできてるかどうか覗き込むと、まぁとんちんかんなことを長い時間かけて書いてらっしゃるわけです。おそらく、わからなくてもやってる風に見せてたんでしょう。
自習じゃダメなんです。できないんですよ、下位生は。
内容、量、時間、全て指定して、脳と手を機械的に動かしてもらうことから始まるでしょう。わからなければ、すぐに誰かを頼る。そういう状況に身を置かないとダメなんです。
「自習には呼んでもいい」これを無視して、補習(授業)を組んでの対応を始めました。
今から考えれば、こんな勝手なことをしていたらクビになってもおかしくはなかったと思います。会社からすれば、商売成り立たないでしょうし。
勉強量が増えているだけあって、生徒は成長します。しかし、個別でこれは長くは続けられないとも考えました。違和感ありますよ、特定の生徒を授業時間以外に呼び出して授業するって。他の生徒や先生から見ても、「何やってんの?」って感じですし、「その生徒だけズルくないですか?」なんて言われてもおかしくありません。
しかし、これしか方法がありません。これで救えると言い切れるわけではないですが、救うためにはこの方法しかないです。
だから今は「決まっている授業時間以外に追加で補習をさせてもらうことがあります」「できなければ尚更です」という方針にしています。
受講教科数に関係なく、その教科の点数を取れるように面倒見きる。
宿題なんて嫌いなんです、私自身が。
この方法以外に下位生を救う方法があって、それを実行している塾があるとすれば、私は指導力で絶対にその塾に勝てないでしょう。
関係ない話ですが、荒牧の方で堤防が決壊して、浸水などの被害が出たそうですね。大丈夫でしょうか。
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